運動について学ぶことは、筋肉をつけることだけではなく、人間が本来持っている「動く力」を維持することにつながります。
「立ち上がるのが少し大変になった」「階段が以前より怖くなった」。こうした変化を年齢のせいだと思っている方も多いかもしれません。
しかし、「立つ」という動作には、筋力だけでなく、足裏の感覚、股関節の動き、姿勢、バランスなど、さまざまな身体機能が関わっています。
今回は、将来も自分の足で歩き続けるために大切な「立つ力」について、3つの視点から紹介します。
①「立つ」は人間が獲得してきた基本動作
私たちは普段、「立つ」という動作を当たり前のように行っています。しかし、人間は生まれた瞬間から立てるわけではありません。
赤ちゃんは、寝返り、這う、座る、しゃがむ、立ち上がるといった段階を経験しながら、少しずつ二足で立つ能力を獲得していきます。
立ち上がるときには、足裏で床を感じながら重心を移動し、足首・膝・股関節を連動させ、体幹で姿勢を調整しています。つまり「立つ」とは、脚の筋力だけで成立する単純な動作ではなく、全身を協調させる高度な基本動作なのです。
実際に、高齢者の身体機能評価では「椅子から立ち上がれるか」「どのくらいの速さで立てるか」といった能力が評価項目として使われています。
何気なく行っている「立つ」という動作は、現在の身体機能を映す一つの指標でもあるのです。
②現代人は「立つための動き」を使わなくなっている
現代の生活は便利になり、昔と比べて身体を大きく使わなくても生活できる環境になりました。
椅子中心の生活、車での移動、エスカレーターやエレベーターの普及によって、床から立ち上がる、しゃがむ、階段を上るといった動作を行う機会が少なくなっています。
特に「床から立つ」という動作には、股関節や足首の可動性、下半身の筋力、バランス能力など、多くの身体機能が必要です。
研究でも、椅子からの立ち上がり能力や歩行速度などの身体機能が、将来の生活機能や健康状態と関連することが報告されています。
つまり、「年齢を重ねたから立てなくなる」という一方向の話ではなく、立つ・しゃがむ・歩くといった動きを使う機会が減ることで、その能力も少しずつ失われていくという視点が大切です。
便利さによって身体への負担は減りましたが、同時に「身体を使う機会」まで減っているのが現代の生活なのです。
③寝たきりを防ぐために「基本動作」を取り戻す
将来のために必要なのは、特別な運動だけではありません。
大切なのは、人間が本来行ってきた基本的な動きを日常から失わないことです。
床に座る。しゃがむ。そこから立ち上がる。歩く。階段を上る。
こうした動作では、足裏で床を感じ、重心を移動し、股関節や体幹を連動させながら姿勢をコントロールしています。日常の中で繰り返すことそのものが、身体機能を使い続ける機会になります。
WHOも高齢者に対して、有酸素運動だけでなく、筋力やバランス能力などを組み合わせた身体活動を推奨しています。
将来のために「鍛える」という考え方も大切ですが、その前に考えたいのが、今できている動きを失わないことです。
自分の力で立つ。歩く。行きたい場所へ行く。
こうした当たり前の日常を10年後、20年後も続けるために、まずは毎日の生活の中で「立つ」「しゃがむ」「歩く」といった基本動作を使い続ける。
今日何気なく行う一回の立ち上がりも、未来の自分の足で歩き続けるための大切な運動なのかもしれません。

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皆様が20年、30年先も健康的なライフスタイルを過ごしていけるために、これからも日常に活かせる健康のヒントを発信していきます。

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