運動について学ぶことは、筋力や体力を高めることだけではなく、私たちが普段何気なく行っている「呼吸」や「歩く」という動きを見直すことにもつながります。
「少し歩いただけで息が上がる」「階段を登ると苦しい」「深呼吸をしてもうまく吸えない」。
こうした変化を感じると、「年齢だから」「体力が落ちたから」と考えてしまいがちです。
もちろん加齢や体力も関係します。しかし、呼吸は肺だけで行っているわけではありません。
今回は、呼吸・姿勢・歩行の関係から、息切れについて3つの視点でご紹介します。
①息切れは「肺」だけの問題ではない
私たちは呼吸を「肺に空気を入れること」と考えがちですが、実際には肺そのものが自力で大きく膨らんでいるわけではありません。
呼吸では、横隔膜や肋間筋などが働き、胸郭の容積が変化することで肺に空気が入ります。
さらに取り込まれた酸素は血液によって全身へ運ばれ、筋肉の中にあるミトコンドリアでエネルギー産生に利用されます。
つまり「歩くと息が上がる」という現象には、肺だけではなく、呼吸筋、胸郭、心臓や血管、筋肉まで含めた一連の仕組みが関係しています。
特に横隔膜は、呼吸における主要な筋肉です。
姿勢が崩れ、胸郭や腹部が動きにくくなると、呼吸時の胸郭運動も小さくなり、首や肩周辺の補助呼吸筋に頼った呼吸になりやすくなります。
「たくさん吸っているのに楽にならない」というときには、吸う量だけではなく、身体全体を使って呼吸できているかを見ることも大切です。
②現代生活は「呼吸を深く使う機会」が減っている
現代では、長時間のデスクワーク、スマートフォンを見る姿勢、車移動など、身体を大きく動かさない時間が増えています。
一方、かつての生活には、歩く、しゃがむ、荷物を運ぶ、坂を登るといった動作が日常の中に多く存在していました。こうした活動では、筋肉だけでなく、呼吸も自然に大きくなります。
現代では身体活動量の低下に加えて、座っている時間が長くなっています。研究でも、長時間の座位姿勢や前かがみ姿勢では、胸郭の動きや呼吸機能が変化することが報告されています。
また、横隔膜は呼吸だけでなく、腹腔内圧の調整を通じて体幹の安定にも関わっています。
つまり呼吸と姿勢は別々ではありません。
身体を動かす機会が減り、姿勢が固定されることで、「深く呼吸する」という身体本来の動きそのものを使う機会も少なくなっている可能性があります。
③「呼吸を鍛える」前に、呼吸を感じる
呼吸を良くしようとすると、「もっと深く吸おう」と考えがちです。
しかし、たくさん空気を吸えば良いわけではありません。
まず大切なのは、自分の呼吸がどこに入っているのかを感じることです。
息を吸ったときに肋骨が横へ広がるか。背中側にも膨らむ感覚があるか。息を吐いたときに肋骨が自然に戻っていくか。
こうした感覚を確認すると、自分が普段どのように呼吸しているのかが見えてきます。
そして「歩くこと」も、非常に身近な呼吸運動です。
歩行速度が上がると酸素需要が増え、換気量も自然に増加します。
呼吸と歩行にはリズムの相互作用もあり、身体活動の中で呼吸を使うことは、呼吸機能を保つうえでも重要です。
「歩きながら鼻から吸う」「ゆっくり吐く」「歩幅や姿勢を感じる」。
呼吸だけを切り離して考えるのではなく、身体を動かしながら自然な呼吸を取り戻していくことが大切です。
息切れを感じたとき、「年齢だから仕方がない」と決めつける必要はありません。
呼吸が変われば、姿勢が変わる。
姿勢が変われば、歩き方も変わる。
そして歩き方が変われば、また呼吸も変わっていきます。
呼吸・姿勢・歩行は、それぞれ独立したものではなく、一つにつながった身体の働きです。
普段は無意識に行っている「息をする」という動きを感じてみることが、本来の身体を取り戻すきっかけになるかもしれません。
ただし、以前にはなかった息切れが急に現れた場合や、胸痛、動悸、めまい、安静時の息苦しさなどを伴う場合には、運動や呼吸法だけで判断せず、医療機関へ相談することも大切です。

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